私たちは 6 人のスタッフで日夜、緊急対応を含めた循環器診療に携わっています。年間の入院患者数は約 1,100 例、そのうち約 5 割が緊急入院であり素早く適切な対応が求められます。ここでは循環器内科の活動状況についてご紹介します。
私たちがもっとも得意とするのは虚血性心疾患といわれる心筋梗塞や狭心症の治療です。心臓カテーテル検査は年間 800 ~ 900 例、冠動脈閉塞、狭窄に対する形成術は年間 250 ~ 300 例で推移しています。多くの場合、バルーンや冠動脈ステントによる狭窄病変の拡張が行われますが、最近は再狭窄予防のため薬剤溶出性ステントの使用頻度が増加しています。またその病変形態に応じて、動脈硬化性アテロームを切除する DCA 、石灰化病変を削るロータブレーターなどを駆使して病変に適した治療を進めています。現在日本心血管インターベンション治療学会の指導医が 2 名、認定医が 2 名在籍しています。更に冠動脈形成術のレベルを高めるために 2001 年から仙台 PTCA ネットワークライブデモンストレーションをこれまでに8回主催し、全国から著明な術者を招いて一緒に困難な症例の治療にあたっています。
ライブポスター
しかしこのような心臓カテーテル検査や治療は手術件数が多ければ良いというわけではありません。侵襲的な検査、治療については患者さんにとってリスクを上回るメリットがあるかどうか、事前の充分な検討が必要です。私たちは一人一人の患者さんについて循環器内科、心臓血管外科合同のカンファレンスを行うことにより、どのような検査、治療がもっとも患者さんにとって安全で効果的であるか、考え続けています。そのため冠動脈狭窄が存在していても冠動脈形成術を選ばず内服治療を選択することもありますし、バイパス手術がより安全と判断する場合もあります。このような治療方針の決定は、当院の現在までの治療実績や経験から得られた知識の集積、そして大規模臨床試験の結果などから得られた知識、という両面から判断しています。現状よりも更に良い治療を患者さんに提供するために常に最新の知識を得なければならず、私たちは努力を続けています。

カテーテル室

治療前後の冠動脈
私たちは冠動脈狭窄を評価する手段として心臓カテーテル検査の他に平成 17 年 5 月から冠動脈 CT も併用しています。冠動脈 CT はカテーテル検査の完全な代替物とはなりえません。しかし非常に優れた面も持っています。冠動脈 CT は陰性的中率 ( 冠動脈狭窄が存在しない場合に正しく診断する ) に優れており、病歴聴取や負荷心電図だけでは労作狭心症が否定できないという方のスクリーニングに有用です。冠動脈 CT と心臓カテーテル検査を状況によって使い分けることでより効果的な診断ができると考えています。

冠動脈CT
狭心症には動脈硬化性プラークが血管内腔を狭小化させて心筋の酸素需要に応じきれなくなることで症状や心電図変化をきたす労作性狭心症と、血管が縮むこと ( 攣縮 ) により一時的に冠血流が低下する冠れん縮性狭心症があります。完全に二つのタイプに二分されるわけではなく、プラークにより軽度狭窄をきたしている血管に攣縮が起きると虚血をきたすなど両者の要素を持つ狭心症もありますが、どちらの要素がより影響しているかで治療法も変わります。動脈硬化性プラークによる狭窄病変に対しては血行再建を考慮することになり、冠れん縮を起こしやすい冠動脈に対しては血管拡張剤など薬剤で対応することになります。しかし冠動脈造影や冠動脈 CT では血管の狭窄の有無については判断できますが、冠れん縮による狭心症の診断はできません。縮みやすい血管かどうか検討するためには薬剤による負荷試験が必要です。当院における狭心症の患者さんの内訳は過去二年間で労作性狭心症 8 割、冠れん縮性狭心症 2 割でした。冠れん縮性狭心症は少なくない割合で存在します。冠れん縮性狭心症の患者さんの中には、 “ 冠動脈狭窄は無いと言われているけれども胸部症状は良くならない ” と悩んでいる方もおられます。私たちは冠れん縮性狭心症に対しても積極的な診断と治療を心がけています。

Achによる冠れん縮、ISDNによるれん縮解除
動脈硬化は全身疾患です。冠動脈疾患は全身の動脈硬化性変化の一つの表れにすぎません。冠動脈に狭窄病変がある場合、他の血管にも動脈硬化が進んでいる可能性が高いといえます。特に下肢動脈の狭窄、閉塞は痛みのため日常生活が制限されるだけでなく、生命予後に影響してくることがわかってきました。私たちは下肢動脈の動脈硬化性病変に対してもバルーン、ステントを使用して治療をしています。血流再開直後より下肢冷感の解消、歩行時の痛みの消失など自覚症状の改善が認められることが多く、効果的な治療と考えています。
また他の血管に動脈硬化が進行していると確認することは、反対に冠動脈疾患の早期発見につながる可能性もあります。実際に私たちは脳梗塞の既往を持つ患者さんは冠動脈疾患をもつ割合が高いことを確認しています。そのため頸動脈エコー、下肢血流評価などの検査も積極的に取り入れています。その検査の結果、胸部症状は無くても冠動脈左主幹部狭窄や重症三枝病変などを有している患者さんを心血管イベントが起きる前に治療できた経験も多くもっています。
動脈硬化による血管の狭窄を拡げればそれで治療が完了するわけではありません。拡げる治療だけでは、もとになっている動脈硬化の進行を止めることはできず、次々に新しく血管が狭くなってきます。動脈硬化を進める因子を抑えることで狭窄病変を安定化させることが大切です。そのためには食事に留意し、運動を心がけ、禁煙することが必要です。動脈硬化の進展を抑えるため、内服薬の使用も含めて私たちがお手伝いいたします。
私たちは虚血性心疾患だけでなく心不全についても積極的に対応しています。基礎疾患は様々ですが、どのような心疾患であっても心不全を引き起こす可能性があります。急性心不全により入院された患者さんに対しては基礎疾患を診断しつつ急性期治療を進めます。ある程度落ち着いた状態まで到達したところで心臓カテーテル検査などにより精査、病態を更に詳しく評価し、その方の病態に応じて血行再建、種々の薬物療法、手術治療などからもっとも効果的な治療を選択します。更に高度な治療 ( 補助人工心臓、心移植など ) を必要とする場合は、密な連携のある東北大学病院循環器内科と相談させていただく場合もあります。
近年の高齢化に伴い高齢の方の心不全を治療する機会も多くなりました。高齢の方は心不全による入院を繰り返し、病院で過ごす期間が長期化する傾向にあります。私たちは心不全入院を減らし、入院したとしても早期に退院までたどりつけるようにしたいと考えています。心不全患者さんの病態、検査結果などを総合的に評価してみますと心機能を維持することも重要ですが、それ以上に栄養状態などの一般的状態が入院の長期化に影響していることがわかりました。心不全で入院される患者さんに対しては心臓の治療だけではなく全身管理が非常に重要と考えられます。私たちの病院では入院時に患者さんの栄養評価をおこない、入院後も定期的に栄養サポートチーム (NST) が栄養状態、一般状態を評価、維持安定させるように取り組んでいます。
効果的な医療は、普段からのかかりつけの医院と、入院が必要となったとき専門的な治療を受ける病院との連携により生まれます。当院は設立当初より地域連携病院として活動しています。私たち循環器内科も、病院の中の一標榜科としてだけではなく、地域連携について積極的に考えています。半年ごとに開催している心臓病カンファレンスはその取り組みの一つです。地域で開業されている先生方と一緒に症例検討を行い、循環器関係のトピックスについての講演を時には講師を招いておこなっており、既に 17 回を数えています。この会は私たちスタッフにとってもよい勉強の場とさせて頂いています。
私たちはこれまでの心臓病治療の経験を生かして更に進んだ診断や治療に繋げられないか常に考え、発信しています。以下は最近の業績です
(1) 虚血性心疾患について
心筋梗塞症例のデータを集積し治療への還元を目指しています。
冠動脈形成術の経験を評価
いかに安全に造影検査をするか、検討を続けています。
心筋梗塞の大きさを抑える治療の可能性を探っています 。
(2) 脳血管疾患と冠動脈疾患について
(3)心不全と栄養状態について
心不全時の栄養状態を評価、早期退院を目指しています 。
広い範囲の心疾患に対してもよい医療を目指しています 。
臨床面、研究面において非常に忙しい科ではありますが、私たちには循環器内科を志している方に充分な研修をしていただく準備があります。特に虚血性心疾患の治療、冠インターベンションの術者として経験を積み、かつ循環器専門医として進んでいきたいという方にとっては魅力的な環境と思います。当科でインターベンションの研鑽を積まれ、各病院でインターベンションに携わっている先生も大勢おられます。
現在、後期研修医として日夜奮闘している N 先生にコメントをお願いしました。
平成 18 年に山形大学を卒業し、仙台市内の市中病院で二年間の初期研修を終了後、後期研修先にオープン病院を選びました。循環器内科医として臨床を行っていくには早いうちから心臓カテーテル検査、治療の技術の習得が不可欠と考えたため、心臓カテーテル症例数が多く、かつ自分がオペレーターとして手技や治療の機会に多く携わることのできる当院を選びました。
一年間の研修を終えた段階で、中間地点の感想ですが、とても充実した研修生活で満足しています。心臓カテーテル検査は一ヶ月後よりオペレーターとしてカテを扱わせて頂き、一年間で一般的な造影手技を学ぶことができます。また、一年目の後半から PCI の術者としてインターベンション学会指導医、認定医の先生の下で直接指導を受けられる環境は大変恵まれていると思います。しかし一度インターベンションに携わるとその低侵襲性から、ともすると自ら PCI の適応病変を拡大解釈しがちになってしまいますが、上級医の先生方との discussion で適応の有無については常に厳しく判断して頂くことができます。逆にそれが患者さんに過不足のない検査、治療を提供しよう、というモチベーションにつながっています。救急搬送も多い市中病院としての性格上、時間的余裕は多くはありませんが、それでも毎日少しずつ循環器内科医として前進できていることを実感しています。この後期研修中にオープン病院でできる限り多くのことを吸収し、今後の診療の基礎を作りたいと思い、日々診療にあたっています。
N 先生ありがとうございました。私たちから吸収できるものは全て持って行ってください。そのためには私たちも努力を惜しみません。一緒に前進しましょう。頑張ってください。
ご紹介してきたように仙台オープン病院循環器内科は臨床においても研究においても非常に高い activity を維持しています。その原動力となっているのは、患者さんにとってより良い医療を提供したいというスタッフ全員の強い願いです。
循環器内科スタッフ
加藤敦、浪打成人、杉江正、高橋務子、瀧井暢