秋季勉強会

登録医会

秋季勉強会

日時 平成30年10月10日(水)午後7時
場所 仙台 勝山館
演題 「法医学の紹介と日本における社会医学的課題」
演者 東北医科薬科大学医学部法医学教室  教授 高木徹也先生
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東北医科薬科大学は、東北地方の医師不足解消、地域医療を支える総合診療医の育成、震災からの復興を目的として、それまで薬学部単科の大学に医学部を新設して創立された大学です。医学部としては、琉球大学設立以来の37年振りの新設ということになります。

一方で、法医学は医学の分野では衛生学や公衆衛生学と同じ社会医学に分類され、死因究明や鑑定を目的とした法医解剖を中心とした実務を行っております。当大学でも法医解剖施設が完成し、平成29年4月から宮城県や海上保安庁等からの依頼による解剖を開始しました。それまで宮城県では東北大学1校で行われていた解剖業務を分担することで、東北大学の負担を軽減するとともに、2校に分担したことによる公正・中立性が高く評価されております。大学設立時は医師2人で業務を開始しましたが、その後、薬剤師1人、技術職員1人が加わって計4人となり、年間約150件の解剖を滞りなく行うことが可能となりました。解剖業務以外には、これまで解剖で培われた医学的知見を利用して、生体鑑定や画像鑑定などを行い、刑事事件や民事事件、労働災害認定、保険金請求等の案件における病態生理学的判定や成傷機序の鑑定などを行っております。ただし、日本では解剖や鑑定を行うことができる法医学医師は約150人、東北地方では10人程度しかおらず、法医学医師1人にかかる負担が増大している現状にあります。実際の鑑定は、主に医学一般的知識を持って病態生理や成傷機序を解説することが主要となっておりますので、ぜひ臨床の先生方にも鑑定業務へのご協力をお願いしたく思います。

教育面においては、法医学的知識だけでなく、設立目的である地域医療に貢献できるよう鑑別診断の精度向上、震災の伝承などを中心として学生に講義や研修を行っております。日本は超高齢社会となり、特に高齢化が如実に進行している東北地方では高齢者への充実した医療が急務となっております。中でも予防医学向上のためには傷病や死因の統計学的解析が必須ですが、現在の日本の統計は他の先進国に比べて精度が低いのが現状です。死因判断などの法医学的知識を理解していただいて統計の精度を上げ、更なる予防医学の向上に役立てていただきたいと願っております。日々診療でお忙しいとは思いますが、超高齢社会への対応、地域医療の充実を図るためにも、今後とも多種専門分野間での医学的な交流をお願い申し上げたく思います。